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部族型組織から町型・都市型組織へ/日本経営のケイエイ

  • 業種 病院・診療所・歯科
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    企業経営
  • 種別 レポート

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部族型組織から町型・都市型組織へ

株式会社 日本経営 / 代表取締役社長 橋本竜也

部族型組織から町型・都市型組織へ

企業の発展段階には、いくつかのステージがあります。私はブリッツスケーリングという書籍を参考に、家族型組織、部族型組織、集落型組織、町型組織、都市型組織として整理しています。

ここではそれぞれの組織の詳しい話は割愛しますが、急成長期には部族型組織が効果を発揮しやすく、安定事業の場合は集落型組織が比較的効果を発揮します。

多くの成長企業や成長を経験した企業の場合、部族型組織の運営を続けがちですが、そこから町型組織、都市型組織へとうまく移行できず、問題が多発してしまうケースが非常に多くあります。ところが、成長を持続している企業は、ある段階から町型・都市型組織へと移行していきます。当社においても部族型組織から町型・都市型組織への移行が重要な課題であり、当社は今、町型・都市型組織への移行にチャレンジしているところです。

部族型組織の特徴は、猛烈な働きによって成果を上げていくことです。ヒット商品がある、市場全体が伸びているなど、労働量に比例して成果が上がるような経営環境においては、非常に効果的な組織です。やればやるだけ成果が上がるとわかっているので、部族型マネジメントのポイントは、徹底した実行管理であり、指示命令の徹底とPDCAの管理が効果を上げます。

ところが、ヒット商品もある程度一巡し、市場環境が厳しくなってくると、労働量を強化しても思ったほど成果が上がらないという事態に直面します。また、部族型組織の場合、努力の焦点が個人に集中しがちなので、組織規模が大きくなってくると精鋭ばかりを集めることが難しくなり、好成績を収める社員の割合が相対的に下がってきてしまいます。こうなると、企業は成長を続けることが苦しくなり、指示命令と徹底した時刻管理によるマネジメントは、従業員にとって強いストレスとなり、離職や休職につながってしまうという大きなデメリットとなります。誰でも指示命令や細かい実行管理にはストレスがありますが、それでも成果が上がっていて、報酬でも報われていればまだ我慢できます。しかし、成果が上がらなくなってしまえば、「やってられない」と、モチベーションは大幅にダウンしてしまいます。

部族型マネジメントのもう一つの特徴は、過去に成果を上げた上司や先輩が、自分の成功体験をもとに部下や後輩を指導してしまいがちだということです。すでに過去の成功体験が通用しない状況になっている場合は、そのマネジメントは大きな弊害をもたらすことになります。

そこで、企業が成長を続けながら次のステージに進むためには、チームの力を活かし、組織の力で成果を上げていく町型・都市型組織に変えていく必要があります。町型・都市型組織の特徴は、ビジョンと方針を徹底して共有し、それらを踏まえて従業員が主体的に行動する仕組みや仕掛けを整えていくことです。いわゆる規制緩和にあたるわけですが、町型・都市型組織においては権限移譲も重要です。権限がなければ主体性は発揮できません。

当社は50年以上の歴史がありますが、その間、ほぼ一貫して増収増益で成長してきました。その間は部族型マネジメントが功を奏しました。私が入社した25年前は完全なる部族型組織。厳しい“ご指導”は正直苦痛でしたが、なんとか耐えていると、確かにやればやっただけ成果も上がるという状況でした。まさにムチとアメ(ムチが先!)。ところが、人数が増えてくるとそれに耐えられない人が出てきます。耐えられずに辞める人がいれば、補充すればよいわけですが、そう簡単に補充できるわけではないですし、育成にも時間がかかります。そのため、ある程度の段階から人数が頭打ちとなり、組織の成長が望めません。次の段階に進むためには、町型・都市型組織にステージを変えていく必要があります。当社はここ数年、町型・都市型組織を目指して改革を進めています。

町型・都市型組織においては、会社のビジョンと方針がとにかく大事です。何のために当社はあるのか、なぜこの事業をするのか、この納得感、さらには参画意識がなければ従業員はモチベーションを保つことができません。そして、方針です。部族型組織の場合は、「〇〇をしてはならない」「〇〇をせよ」ということが強調されます。これを私は掟と呼んでいます。

町型・都市型組織は一人ひとりの主体性が大事ですが、そのためには、どの方向で考えるのか、どういう基準で考えるのかという視座を共有することが重要です。だから、ビジョンと方針が必要となるのです。

変化が少なく、安定していれば、いつもと同じことをきちんとやり遂げるということで成果は上がりますから、実はビジョンや方針を強く意識しなくてもそれほど問題はありません(これは集落型です)。主体性と創造性を従業員に求めるのであれば、ビジョンと方針が非常に重要となるのです。

さて、当社は町型・都市型組織への移行の最中であり、ビジョンと方針を明確にしたうえで、大幅な権限移譲をしたり、必要な会議を絞ったり、部門の役割を明確にして役割分担をしたり(業務分担ではない)と、様々な取り組みをしていますが、そう簡単ではありません。

制度や仕組みづくり自体にも賛否両論があって大変ではありますが、もっとも難しいのは、経営者、役員、管理職の意識転換です。私自身も部族の中で成果を上げてのし上がってきた一人ですから、部族型組織の居心地の良さも知っています。部族型組織の時期は高成長期と重なるので、ベテランほど部族型組織の良さを知っているのです。だから、部族型組織のマネジメントを捨てきれません。部下にやらせきる、明確な指示を出す、行動を管理する、褒める、叱る、これらは典型的な部族型マネジメントです。ベテランにとっては結構気持ちのよい響きですよね。

だから、町型・都市型に進むためには、町型・都市型組織を目指すということを明確に意識し、従業員とも共有する必要があります。まさに、目指す姿、組織ビジョンです。何となくとか、必要に駆られて町型・都市型になる企業もありますが、やはり意識して取り組むほうがスピード感があります。特に社歴の長い企業ほど過去の成功体験もあるので、明確にすることが効果的でしょう。

部族型がダメだということではありません。ステージにおいて向き不向きがあるということです。少数精鋭のままであれば部族型でもよいでしょうし、例えば新サービスについては分社化して部族的な運営で一気に市場を広げるということもあると思います。ただ、ある程度の規模になってきた、市場環境が変わってきたということであれば、継続的な成長のために町型・都市型を目指すことになるはずです。また、創業者は部族型でもいいのですが、二代目、三代目となると部族型の運営そのものが難しいというケースもあります。

当社も道半ば。部門ごとの温度感もあります。あの部門は町型になってきているな、あの部門はまだ部族っぽいぞ、など。それでも、「マネジメントの力で社会に希望を与える」というビジョンを掲げ、毎日のようにビジョンと方針を従業員と共有しながら、町型・都市型組織を目指しています。各従業員やチーム、部門がそれぞれの主体性で様々なチャレンジをしてくれており、私には想像もつかないような取り組みや成果を生み出してくれていることが非常に嬉しいですし、当社の誇りです。部族型マネジメントでは味わえない喜びだと思います。

皆さんの組織ではいかがでしょうか。

このレポートの執筆者

橋本竜也
株式会社 日本経営 代表取締役社長
組織人事コンサルタント

1999年入社以来、人事コンサルティング部門にて、クライアントの人事制度改革に携わるほか、不採算企業の経営再建にも従事。コンサルティング実績は上場企業から中堅・中小企業まで150社を超える。「良い経営は人を幸せにする、悪い経営は人を不幸にする」を基本スタンスに、人事コンサルティングや経営顧問を行っている。
<著書>
「チームパフォーマンスの科学」幻冬舎2021年12月
「中小企業の未来戦略を具現化する!組織マネジメント実践論」プレジデント社2022年10月

本稿は掲載時点の情報に基づき、一般的なコメントを述べたものです。実際の経営の判断は個別具体的に検討する必要がありますので、専門家にご相談の上ご判断ください。本稿をもとに意思決定され、直接又は間接に損害を蒙られたとしても、一切の責任は負いかねます。

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